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健康食品に薬機法が適用される根拠とウェブマーケティング関係者が気を付けるべきポイント

更新日:2022年7月28日


健康食品に薬機法が適用される理屈を理解し、さらに薬機法の広告規制に違反した場合のサンクションについて整理する


健康食品に薬機法は適用されるのか?


薬機法は、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、その名の通り、医薬品や医療機器等を規制対象とする法律です。もう少し詳しく見ると、薬機法は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品を規制対象

にする法律です。


第1条 この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

他方で、健康食品は、プロテインやサプリメントなどの食品であって、通常私たちが想定する薬ではありません。


そうすると、健康食品は医薬品ではないから薬機法の規制は及ばないのではないか、という疑問がわいてきます。



事例~ステラ漢方事件



健康食品に関して薬機法が適用された著名なケースとしてステラ漢方事件があります。

大阪府警は7月20日、サプリのECを運営するステラ漢方の従業員や広告代理店の社長ら6人を、医薬品医療機器等法違反の疑いで逮捕した。同社の従業員らは、医薬品として承認されていないサプリメントについて、「肝臓疾患の予防に効果がある」などと広告に表示した疑いがあるとしている。大阪府警によると、逮捕されたのはステラ漢方の従業員である佐野宏樹容疑者(29)と、広告代理店であるKMウェブコンサルティングの町田幸平容疑者(30)ら6人。ステラ漢方は今回の逮捕事件について、ホームページ上で「当社社員が警察当局の捜査対象とされているのは事実だ。今後、当局の協力要請に誠実かつ真摯に応じる」(佐々木拓道社長)としている。    ステラ漢方は「肝パワーEプラス」の商品をメインに展開する通販会社。2019年10月期の通販売上高は本紙推定で9億円だった。※日本ネット経済新聞2020年7月23日よりhttps://netkeizai.com/articles/detail/1345 

ステラ漢方事件は、健康食品であるサプリメントの広告宣伝が薬機法の広告規制に違反したとして関係者が逮捕された事件です。


この事件は、広告主(販売業者)ではない広告代理店の従業員なども、薬機法違反により逮捕されうるということ世に知らしめたという点で有名です。薬機法違反には罰則があり、罰則は違反行為の実行者が対象となりますので、従業員であっても違反行為を実行した場合には逮捕されるなど刑事事件の当事者となる可能性があります。


※詳細は、「薬機法の広告規制の対象者~ステラ漢方事件」


このように、健康食品であっても薬機法の広告規制が及ぶ場合があります。



薬機法の規制方法~目的規制



一見すると薬とは言い難い健康食品に薬機法が適用されるのはなぜでしょうか。


それは、薬機法が医薬品の定義を


・人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている

・人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている


と定めているからです(薬機法2条1項)。

※動物の規制とは?


つまり、健康食品のように実際には医薬品的な効能効果を持たない物であっても、医薬品的な目的を有していたり、通常人がそのような目的を有していると認識するような物であれば、薬機法上の「医薬品」に該当すると判断されることになります。


ステラ漢方事件の例でいえば、「肝臓疾患の予防に効果がある」などの広告表示によって、当該広告対象の健康食品が「人の疾病の予防に使用されることが目的とされている」にあたると判断され、医薬品とみなされたというロジックになります。

※医薬品該当性の詳細は、「健康食品の医薬品該当性について」


このように、薬機法は、医薬品的な目的を有している物を「医薬品」に該当するものとして規制を行っていることから、目的規制と呼ばれることもあります。



医薬品とみなされるとどうなるのか


では、健康食品が医薬品とみなされるとどうなるのでしょうか。


健康食品のD2C業者が医薬品的な効能効果を標ぼうする広告を行った結果、当該健康食品が医薬品とみなされた場合を想定します。


基本的には以下の条項への違反の可能性があり、その場合の罰則は以下のとおりです。


【広告行為に関して】

規制

罰則

・未承認医薬品の広告(薬機法68条)

→何人も、未承認医薬品の広告をしてはなりません

個人:2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はその併科

会社:200万円以下の罰金

・虚偽誇大広告(薬機法66条1項)

→何人も、医薬品の効能・効果に関して虚偽又は誇大な記事を広告してはなりません

個人:2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はその併科

会社:200万円以下の罰金


【製造、販売に関して】

規制

罰則

​・無許可製造販売(薬機法12条1項)

→医薬品の製造販売業をするためには、種類に応じた許可を厚生労働大臣から受けなければならなりません。

個人:3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科

会社:300万円以下の罰金

・未承認医薬品の製造販売(薬機法14条1項)

→医薬品、医薬部外品の製造販売をしようとする者は、原則として品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければなりません。

個人:3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科

会社:1億円以下の罰金

・無許可販売(薬機法24条1項)

→医薬品の販売をするためには、薬局開設又は医薬品販売業のいずれかの許可を得なければなりません。

個人:3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科

会社:300万円以下の罰金

2021年8月改正(課徴金)


広告代理店など広告を取扱う者の責任



以上のとおり、健康食品販売業者は、薬機法の規制の適用を受けることがあります。

もっとも、ステラ漢方事件で見たとおり、薬機法の罰則は、健康食品販売業者に限られず、広告代理店の従業員らも対象となっていました。これは薬機法が何人規制を採用しているためですが、この点は別の記事で詳しく触れます。



まとめ



✓健康食品はがいわゆる「薬」ではない。

✓しかし、薬機法は医薬品的な効能効果を標ぼうしていれば医薬品とみなすという規制を採用している(目的規制)。

✓ゆえに、健康食品について医薬品的な効能効果を標ぼうした結果医薬品とみなされた場合には、薬機法の規制が適用される。

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